ヨーゼフ=マルチン=クラウス(1756〜1792)はドイツ生まれのスウェーデンの宮廷作曲家。モーツァルトと同じ年に生まれ、モーツァルトの翌年に死んでいて「スウェーデンのモーツァルト」とも言われています。
クラウスの交響曲は現在残されているもので12曲はあり、モーツァルトがト短調の2曲なのに対し5曲(うち1曲は同じ曲の改作)の短調作品です。
このハ短調の「葬送交響曲」は彼の使えていたグスタフ3世の追悼のために書かれ、全楽章が緩徐楽章(ただし第3楽章は「コラール」とのみ表記していて速度指示なし)で、ソナタ形式の楽章がないという異例の作りになっています。
グスタフ3世は「最後の啓蒙専制君主」とも言われ、専制君主でありながらボルテールなどの啓蒙思想を学んでいました。啓蒙君主というと先進的なイメージがあるかもしれませんがロシアやフィンランドに戦争をしかけたりフランス革命への反革命十字軍を組織したり、国内での拷問の廃止や言論の自由の法制化など、矛盾を抱えた政治をおこなったようです。
1792年3月16日、グスタフ3世主催の仮面舞踏会の会場で背後から銃撃され、3月29日に死去しました。軍事費の増加のために貴族に重税をかけたことに反発した貴族によるものと噂されたそうです。
クラウスはこの曲とカンタータの2曲をグスタフ3世の追悼のために作曲後、肺結核のためにこの年の12月に亡くなりました。モーツァルトの亡くなった約1年後のことです。最晩年に死者のための音楽を残した点でもモーツァルトと共通しています。
楽器編成は第1楽章がB管クラリネット、ファゴット、Es管とC管のホルン、C管のクラリーノ(トランペットの前身)が各2、ティンパニと弦5部、第2楽章がファゴット、C管ホルンが各2と弦5部、第3楽章がコントラバスなしの弦4部、第4楽章が第1楽章の編成にオーボエ2本が加わります。
midファイル | musファイル |
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全曲 | 全曲 |
第1楽章「アンダンテ・メスト」 | 第1楽章「アンダンテ・メスト」 |
第2楽章「ラルゲット」 | 第2楽章「ラルゲット」 |
第3楽章「コラール」 | 第3楽章「コラール」 |
第4楽章「アダージョ」 | 第4楽章「アダージョ」 |