「未完成交響曲」ロ短調 D759

作曲者名抜きに「未完成交響曲」と言えばこの曲だと思われるくらいに、世に数ある未完成交響曲の中でも抜きんでている作品です。

1823年、シューベルトがグラーツの楽友協会員に推されたので、そのお礼にと、友人のアンゼルム=ヒュッテンブレンナーを通じて「今書いている交響曲を贈ります」と、ヒュッテンブレンナーに送った曲だろうと言われてきました。

グラーツの楽友協会に贈ろうとした曲かどうかはともかく、この曲は1865年になってようやく発見されます。ヒュッテンブレンナーは第3楽章、第4楽章の完成を待っているうちにこの曲の存在を忘れてしまったのでしょうか?

第1、第2楽章は完成し、第3楽章のスケルツォはフルスコアとして9小節、空白を含めて20小節までのスコアと、スケルツォが110小節、旋律のみのトリオ16小節のピアノスケッチが残っています。もし、この3楽章のスケッチがなかったら、この曲は「未完成」とは呼ばれなかったでしょう。

なぜ未完成のままで残されたかについてはさまざまな説があるようですが、2つの楽章だけで完結していると気づいたシューベルトが第3楽章は書き始めたけれど無意味だと思って途中で投げ出したというのが最も説得力があるように私は思います。

この曲は第1楽章導入部チェロバスのh-cis-d、階名でいうとラシドの動機(第2楽章ではソシド)が第2楽章を含めた全曲を支配し、第1楽章展開部に至っては2つの主題ではなく、この動機を展開するという特異な構成になっています。

なお、第1楽章導入部の主題5小節目など、譜面ではコントラバスも下第2線と下第2間を指定している箇所は、当時のオーケストラでは最低音がeの4弦が一般的だったのではないかと思い、この領域で表現される音はあえて譜面のオクターブ上にしました。

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全曲 全曲
第1楽章「アレグロ・モデラート」 第1楽章「アレグロ・モデラート」
第2楽章「アンダンティーノ・コン・モート」 第2楽章「アンダンティーノ・コン・モート」

2008/06/02(2008/07/14更新) 入口に戻る
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